
ミニサイズのブースター
ブースターといえば、私は長らくRC Boosterを使ってきた。クリアでありながら艶があり、TrebleとBassで音を作り込める。隠し味程度に混ざるドライブも心地よく、Driveを上げれば音を軽く滲ませることもできる。文句のない相棒である。
それでも、ふとミニサイズのブースターが欲しくなった。ペダルボードの隅にもう一台、気軽に足せる小さなブースター。候補は3つあった。
ひとつはMXRのM293 Booster Mini。これはEPプリアンプにMicro Ampを重ねた二段構成で、裏蓋を開けて内部トリムを回せばEPプリアンプ側の出力、つまり得られるドライブ量まで追い込める。数字で言えば幅の広さは随一で、面白そうではあった。ただ、設定箇所が増えるほど迷いも大きくなる性質のため見送った。とはいえ今も入手候補として頭の隅に残っている。
もうひとつはEffects BakeryのCream Pan Booster。安くて小さく、とりあえず一台買ってみるか、と一度は気持ちが傾いた。ただ、EP Boosterの評判を確かめているうちに、ぐいぐいとそちらへ引き寄せられてしまった。
そして最終的に私を動かしたのがXoticのEP Boosterだった。当時販売されていた限定カラーのブルーがとにかくカッコよく、理屈抜きで惹かれた。音がすべてと言いたいところだが、見た目も所有する楽しみのうちである。
EP Boosterとは何者か
名前にある「EP」は、伝説的なテープエコー「エコープレックスEP-3」に由来する。本来はディレイを得るための装置なのだが、これを通しただけで音が太くなり、芯がしまる——そんな効果が知られ、ジミー・ペイジ、エディ・ヴァン・ヘイレン、ブライアン・メイ、エリック・ジョンソンといった名だたるギタリストが、ディレイ目的だけでなく、一種のプリアンプとして愛用していた。
とはいえ、エコープレックスは入手困難な上に高額、大きくてメンテナンスにも手がかかる。あの太いサウンドを手軽に持ち歩けたら——その願いを叶えたのがEP Boosterだ。名機のプリアンプ部の魔法を、手のひらサイズに封じ込めている。そう知って弾くと、音への納得感がまるで違ってくる。
インプレッション
まず感じたのは「これはクリーンブースターとは別物だ」ということ。RC Boosterが音に艶を乗せる方向だとすれば、EP Boosterは音そのものを太く、甘くしてくる。方向性がまったく違う。同じ「ブースター」という言葉でくくれないほど印象は異なるが、元の音を一段上に上げてくれるところは同じだ。
クランチに設定したMarshallやDeluxe Reverbに繋いでみると、その良さが一気に立ち上がる。歪みを足すというより、アンプのゲインつまみがもう一段増えたような感覚。美味しいところを絶妙にプッシュしてれる。特にハードロック系のサウンドは気持ちよく、乾いたクランチサウンドが、伸びのあるドライブへと育っていく。しっかりと太くなった音の芯を、角の取れた輪郭が包み込む。この変化そのものが、EP Boosterの一番の魅力だと思う。
意外だったのは重さ。あれだけ小さいのに、標準サイズのRC Boosterとほとんど変わらない。省スペースにはなるが、軽量化はできない。手に取るとずっしりくる。個人的には、この密度感がむしろ安心感となっている。
RCとEPの使い分け
両方を手元に置いてみて、自分なりの棲み分けが自然と決まってきた。クリーントーンを補強したいときはRC。クランチやドライブをメインに据えたいときはEP。大雑把に言えば、ポップスのようにクリーンを多用する場面ならRC、シンプルなロックを弾くならEP、という感覚だ。どちらが上ということではなく、鳴らしたい音楽の側からペダルが決まる。この2台があればあらゆる場面に対応できるだろう。
3つのモードで表情を変える
EP Boosterは裏蓋を開けると、中に小さなDIPスイッチがある。公式には、このスイッチの組み合わせで3つのモードが用意されている。
ひとつめはDefault。ハリのある、いかにもEPらしい元気なサウンドで、まずはこのまま使っても十分に良い。ふたつめはUnity Gain。ノブをゼロにしたときに原音と同じ音量に揃うモードで、歪みペダルの後ろに置いて「音量は変えずに太さだけ足したい」ときに重宝する。みっつめがVintage。エコープレックスのプリアンプを思わせる、太く甘いトーンに変わる。私はこのVintageが好みで、もっぱらこのモードで使用している。裏蓋を開けて切り替えるだけで表情が変わるので、自分の音を探す楽しみがある。
なお、EP Boosterには初期型(V1)と現行品(V2)があり、スイッチの機能や音の傾向が少し異なる。私が使っているのはV2。Unity Gainが出せるように改善されたもので、ノブをゼロにすれば原音と同じ音量に揃えられて扱いやすい。これから買う人にも取り回しの良いV2をおすすめしたい。
18V

EP Boosterは9Vだけでなく、最大18Vまでの外部電源に対応している。ここで活躍するのが、Xoticから出ているVoltage Doublerという小さなコンバーターだ。9Vの電源を15Vや18Vへと昇圧してくれる装置で、電圧を上げるとペダルのヘッドルームが広がり、ダイナミクスやトップエンドに輝きが増し、コンプレッション感が薄れていく。
まだ私は9Vで使っているが、余裕のある鳴りを狙うなら、いずれ試してみたい選択肢である。18V対応のペダルをリリースしているXoticならではの設計。電源で伸びしろが変わるというのは覚えておいて損はない。
シングル or ハム
このペダルは、シングルにもハムバッカーにも合う。ストラトやテレキャスターで太いサウンドが出ないと感じている人には特に試してほしい。最近私が使っているのはFenderのAmerican Vintage(Lindy Fralin搭載)なのだが、これにEP Boosterを噛ませると、シングルらしい歯切れの良さはそのままに、音に芯がぐっと太くなる。ハムバッカーを繋げば、じゃきっとしたクランチが、伸びのあるリードサウンドへと化ける。
EP Boosterがもたらしてくれるのは、ひとことで言えば「芯と甘さを備えた太さ」だ。派手な機能はないし、EQすら付いていない。それでも、ギターケースに一台忍ばせておくだけで安心できる。
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