「Kahlerの軌跡」シリーズ(全4部+番外編)の第3部です。
- Part1:起源 — Brass Factoryからカム式トレモロ誕生へ
- Part2:変遷 — 黄金期、フルクラム参入、そして衰退
- Part3:現在 — Kahler USAとしての再建(この記事)
- Part4:亜流 — Floyd型、日本市場、そして偽物
- 番外編:Greco FV-105K 実機レビュー
目次
会社の体制
現在のKahlerは、Kahler International(ブランド名としてはKahler USA)として運営されている。2005年4月にブリッジ製造へ本格復帰。現在も製品はすべてアメリカ国内で作られ、基本的に受注生産(ハンドアセンブル)だ。かつて1日450個を量産した会社が、今は一台一台を組み上げる規模で回っている——この「量産メーカーから工房規模へ」という縮小の仕方が、Kahlerというブランドの現在地をよく表している。過去モデル向けのサドル・カム・ロックナットといった補修パーツも供給しており、80年代の実機を今も現役で使えるのは、この体制あってこそだ。
現行ラインナップ
現行の中心は、大きく分けて次の系統になる。
- 2300シリーズ(フラットマウント・カム式) — 主力のPro。ストラトのようなフラットトップ用。7弦・8弦対応は2007年冬のNAMMで追加された。
- 2200シリーズ(スタッドマウント・カム式) — Les Paulのようなカーブドトップは2300が正しく載らないため、こちらのスタッドマウントを使う。
- 2700シリーズ(フルクラム式) — 現行のフルクラム系。かつてのSteeler/Killer/Spyderの系譜を、独自設計で継いだもの。
- マルチスケール(ファンドフレット)対応 — フルクラム式では難しい可変スケールに対応できるのは、カム構造ならではの強み。長らくマルチスケール愛好家は固定ブリッジで妥協するしかなかったが、Kahlerはそこにトレモロを持ち込んだ。
- ベース用トレモロ — Floyd Roseに存在しないベース版を作れるのもカム式ゆえ。復帰後にKahlerが最初に売った2台は2410ベーストレモロだった。8弦ベース用まである。
- 固定ブリッジ — トレモロメーカーでありながら、ハードテイル派向けの固定ブリッジも用意している。カム式と同じローラーサドルを使った製品もあり、Kahler独特の弦の乗り方はそのまま活かせる。
Kahler International


2300 Series Professional Multi-Scale Tremolo Guitar Bridge System (Flat Mount) - Kahler Internationa...
(Some images may be approximate) (2 in 1) tremolo can be locked into a fixed bridge Top routing only, NO REAR ROUTING Top spring tension adjuster Cam and Ball B...
素材はトーンに直結する。真鍮は温かく太い音、スチールは明るくハーモニクスが立つ。ステンレスは1985年から存在し、アルミ削り出しカムは2004年発表・2005年発売。現行OEMの2310がアルミカムを採用する唯一のモデルで、真鍮ローラーを組み合わせる(つまり「2005年以降にステンレスとアルミを拡充した」というのは正確ではなく、ステンレスはもっと早い)。
目玉のひとつがKerry King Edition。そしてマルチスケール対応ブリッジは、現代的なニーズを的確に捉えたラインだ。総じてKahlerは、6弦の主流トレモロ市場ではもはや目立たないが、「フロイドでは対応しにくい領域」——ベース、マルチスケール、多弦、カーブドトップ——で確固たる生存圏を築いている。ちなみに本家Floyd Roseがこの間どう進化してきたかは、フロイドローズの軌跡 Part4(使いこなし・カスタム篇)で扱っている。
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